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GameSynthでリアルな自然&動物音を作ろう(後編)
ブログ前編では、GameSynthで自然環境や鳥、昆虫といった音をプロシージャルで作り出してきました。
今回の後編では、トラやワニといった、大型生物の音をデザインしていきましょう。
茂みを進むトラ
トラのシーンでは「足音」「草の茂み」「低いうなり声」の3パッチを使っています。
足音「ザッ…ザッ…」
2つのFootsteps(足音)モジュールがベースです。一方において靴はDress shoes(革靴)、地面はGrass(草)にしてはっきりとした足音を出し、もう一方では地面をLeaves(枯葉)にし、ざわざわとしたテクスチャにしています。 PitchとScuff(すり足)パラメーターにランダム幅を設けており、ゆったりと歩行しながらも、足音1つ1つにバリエーションを生んでいます。
Gait(歩行)モジュールに備わっているValue出力は、トリガーされたイベントの振幅を送信します。これにより、一歩ごとに音の大きさにばらつきを与えることができます。
草の茂み「ガサ…ガサ…」
Leaves(草木)モジュールのほかに、Rainモジュールも音源に使っています(地面の材質をGrass(草)に設定しているため、雨粒が草に落ちるパラパラ音となります)。
また、Granular NoiseをEQで整え、やや高めのパリパリ感を追加しています。かつ前編で作成した森の自然音とぶつかり合わないよう、全体のピッチを少し下げています。
最後にPerlin noiseでパッチの振幅を変調することで、ランダムで自然なざわめきを与えています。
低いうなり声「グルル…」
まずAnimalモジュールで設定をTigerとし、ModulationとPitchを低く設定することで、ゆったりとした唸り声になります。Noise Bandsは、「ハー」とした息遣いを補っています。さらにChaosモジュールで低音のうなりを強調しています。
さらにFormant Filterでモーフィングパラメーターを調整することで、呼吸の「吐く⇔吸う」サイクルを作っています。
これは2セットのフォルマントを切り替える仕組みです。
水に潜るワニ
ワニの動きは、「足音」「入水」および2つの「水中動作」の4パッチで表現しています。
足音「ドスッ ビチャ」
まず地面設定をCarpetにしたFootstepsモジュールで、のっそりと土の上を歩く「ドスドス」音を作ります(Gaitモジュールで、何歩か歩くように設定しています)。Rainモジュールで液体音も加えますが、ここではEnvelope Followerモジュールで先ほどの足音の振幅を検出し、足音と液体音を連動して鳴らす仕組みを組んでいます。
もう少し手を加えて、ワニが徐々に水に入っていく動きをシミュレートしましょう。モジュール右側で「ビチャビチャ」音を設計し、その強度をMeta Parameterでコントロールします。これは、ワニの水上⇔水中をメタパラメータで制御するのが目的です。
Stutterは本来音にどもり効果を作るためのモジュールですが、ここでは三角形状のスタッターゲートに設定し、その開閉時間をMeta Parameterで制御しています。つまりメタパラメータ値が高いほど、スタッターゲートが開いたままになる時間が長くなるため、大きく長い水しぶきが発生する仕組みです。
GameSynthのRender(書き出し)画面では、異なるメタパラメータ値ごとにバリエーションを複数書き出す機能があります。今回作った、水上⇔水中の「ビチャビチャ」感の異なる音を、一括で複数書き出しできます。
入水「ジャブン」
2つのGooモジュールとRainモジュールがベースです。Gooモジュールでは、設定を変えてさまざまな周波数の「ゴポゴポ」音を作り、
Rainモジュールでは、もう少し動きを伴う「ザバッ」とした音を出しています。また、フィルター処理でカットオフ周波数を変調したNoiseモジュールで、微細な水しぶきを追加しています。
最終的にいくつかのランダム幅が割り当てられ、様々な水しぶきが生まれます。特にEnvelopeのDuration値とVariationにランダム幅を設けると効果的です。GameSynthで複数のバリエーションを書き出した後、映像に適した音を選んで使っていくといいでしょう。
水中を進む「チャプチャプ」
軽めの水音を作りましょう。GooモジュールとRainモジュール、さらに今回はBubbleモジュールも使います。Automation CurveでジェネレーターのDensity/Rate(密度)パラメーターを制御することで、「サーッ」と流れる水音を作っています。
その下のDrifterモジュールでは、制御信号にわずかな変化を加えることで、よりリアルな音にしています。
潜水「ゴボゴボ」
ワニがズブズブ…と沈んでいく感覚を、音で演出しましょう。Hail(雹)モジュールの表面材質をLake(湖)に設定し、さらにRing Modulatorを介してトランジェント成分を消しつつ、音を有機的にしています。また、GooとGranular Noiseで、水中音の原音を作っています。
「ゴボゴボ」と潜水していく感覚は、Dopplerモジュールによるピッチ変化で実現しています。急激なピッチモジュレーションを避けるため、Envelopeを使ってDurationパラメーターをゆっくりと減少させています。その後EQやChorusエフェクトを追加し、音を滑らかにしています。
ブログ前編・後編を通して、環境音、鳥や虫、大型動物などの音作りを見てきました。
これまで紹介してきたアクションバトル系効果音に加え、こういった穏やかなタイプの音作りも、ゲーム、アニメーション、実写映像などに幅広く利用していけるでしょう。