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GameSynth 2022
2022/04/05

GameSynthでリアルな自然&動物音を作ろう(前編)

GameSynthパッチ制作 Accel Speller
執筆者 Nicolas Fournel

これまでGameSynthでは、爆発、ロボットや中世の剣、カタパルトなど、アグレッシブなジャンルの音を作ってきました。

一方でGameSynthは、自然環境音のような、静かで有機的なサウンドを作ることもできます。これはゲームやアニメーション、実写映像の音演出でも役に立つでしょう。

以下の自然番組風のビデオでは、効果音をすべてGameSynthで作成しています。今回はブログ2部構成で、音声素材を使わず100%プロシージャルに効果音を作っていきましょう。

GameSynthを使った自然番組風ビデオ

自然環境音

海岸風景「ゴオオ…ザザア…」

下の動画のように、まず遠い波音を出すため、2つのWindモジュール(風)と1つのRain(水)モジュールを使っています。それらをBiquad Filterに通し、低周波~中周波のみを通しています。 Rainモジュールは、映像の遠景さを考慮して、Far shower(遠くのシャワー) とClose shower(近くのシャワー)のみを出す設定にしています。

さらにループモードにしたAutomation Curveで、ジェネレーターの振幅とフィルター周波数をコントロールすることで、周期的な波音を作っています。
またBiquad Filter直前にScale Offsetを設けて、左右の音にわずかな違いを生んでいます。最後にDelayモジュールによって、空間の広がりを加えています。

プロシージャルな手法なら、ループポイントやクロスフェードなどに頼ることなく、「常に新しい(繰り返しではない)音を、必要な長さで作り出せる」ため、環境音アセットの作成にも便利です。

海岸沿い

滝「ドオオ…!」

2つのRainモジュールがメインジェネレーターです。一方はFrequency Swifterで「ゴオオ」と低音寄りにし、もう一方は、drip系の設定を高めて乱れる水にしています。さらにGooモジュールで、水しぶきのテクスチャも加えています。

映像ではカメラが少しずつ遠ざかっていくため、Automation Curveで、Rainモジュールの振幅やdensity/rate値を下げていくように接続しましょう。

モジュール後半ではEQで周波数を調整し、さらに2つのSpectral Delay(音の左右でDelayAmplitudeの設定をわずかに変えている)でステレオ効果を持たせることにより、迫力のある滝を演出しています。

ちなみにSpectral Delayでも、振幅帯域を調整することで、特定の周波数帯を強められます。

滝

森林「ザザ…」

木々のそよぎを演出するため、Noise Bandsモジュールをメインに使っています。100〜200Hz帯で音を出し、振幅も時間ごとに変動させたのち、Reverbモジュールで空間効果を持たせています。

もちろんLeavesモジュールも、草木のざわめき音に最適です。Closed Leaf(近い葉)とSmall Leaf(小さな葉)設定で、かつ-900centのPitch Shifterとローパス設定のEQ Filterをかけて、静かで暗めの草木の音に仕上げています。

森林

沼地

RainGooモジュールをベースに、静かでじめっとした水音を出しています。両者ともRateDensity値を下げることで、「ゆったり流れる水」の音にしています。

NoiseモジュールはBrownian設定にすることで、「ゴオオ…」とした遠鳴りの音になります。他の作例と同様に、後半でSpectral Delayモジュールで音をステレオ化しています。

沼

鳥と昆虫

エキゾチック感を出すため、鳥や昆虫の音も加えましょう。

海鳥「ヒョイッ…ヒョイッ…」

設定をBird(鳥)にしたAnimalモジュールを使います。Envelopeで、このPitchパラメーターを変調します。

右側のEnvelopeモジュールにはややVariation値をもたせており、これによりClockがトリガーを送るたびに、僅かに異なる「ヒョイ」声が発音される仕組みです。モジュールの下部では、さらにChorusモジュールで、鳴き声により強い変調を与えています。

GameSynthでは、鳥の鳴き声をシミュレートできるモジュールがあります。加えて以下で説明する「高速でピッチを変調させる」手法で、様々な種類の鳥を作っていきましょう。

海鳥

森の鳥「ヒョヒョヒョ…」

以下の作例ではシンプルにサイン波Oscillatorをベースにしています。このケースでは、変調がOscillatorの周波数範囲よりも高くなるため、ピッチ変調はPitch Shifterを使います。下の動画のように、Oscillatorのピッチを変えると(グローバル的に)鳴き声の高さが変えられるのが分かります。

また、Saw Up設定のLFOでメインリズムを作成し、その上のサイン波設定のLFOで、時間とともに少しずつ声の高さも変わります。 さらにPerlin NoiseLFOのピッチを変調させて、より自然な変動リズムを作っています。

海鳥

小型の鳥「チチチ…」

下の動画は前述のAnimalモジュールの作例と似ていますが、こちらはよりシンプルなSine Bank(2~3倍音のみ出す設定)を音源にしています。

そのSpreadパラメーターとMapperモジュールの最小・最大値を調整することで、幅広い鳴き声を生成できます。 Clockモジュールのトリガー送信を加速させることで、独特のリズムを作りだしています。

小型の鳥

沼地の虫「リーリー…」

スズムシ系の虫を作りましょう。高周波の狭いバンドに設定したNoise Bandsモジュールを使っています。30Hz程度のTriangle設定のLFOで、Gainモジュールを変調することで、昆虫独特の鳴き声テクスチャが生まれます。

さらに、全体の音量を制御するために、もう1つLFOを使っています。この変調テクニックで、「ブーン」や「カチカチ」といった色々な昆虫音も表現できるでしょう。

小型の鳥

セミの合唱「シュイシュイ」

セミの鳴き声です。Noiseモジュールと、LFOで高周波変調を加えたSine Bankモジュールがベースです。
このパッチでは、エフェクトチェーンが重要な役割を担っています。まずハイパスを約4500Hzに設定したフランジャーで、セミの特徴的な「シュイシュイ」モジュレーションが生まれます。またSpectral Delayでサウンドを滑らかにし、音の合成音っぽさを消しています。

最後に、5000Hz付近のローパスフィルターで、不要なノイズを除去します。ローパス周波数を4000Hz〜7000Hzで調整することで、鳴き声の過激さを変えられるのが分かります。

小型の鳥


GameSynthを使ったプロシージャル手法なら、

  • 常に新しい(繰り返しではない)音を、必要な長さで作り出せる
  • パラメーターを調節すれば、生き物の種類も変えられる
  • バリエーションも手軽に量産できる

といったメリットがあります。

ブログ後半では、ビデオで登場したトラやワニの効果音作成を見ていきましょう!




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