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GameSynth
2021/11/16

GameSynthでアクション映像に効果音をあてよう(1/3)

プロシージャルサウンドデザインツールGameSynthを使いこなせば、効果音素材に頼ることなく、リアルな音からフィクションの音まであらゆる音を柔軟に作成できます。(もちろん必要に応じて、手持ちの効果音素材の分析・加工・編集も可能です)

今回は、ガンファイト爆発ロボットなどのアクションシーケンスに効果音をあてていくテクニックを、3部のブログに分けて解説していきます。 下の動画が完成版です。

GameSynth Engines Plugin video

※全ての音を100%プロシージャル合成で作っており、効果音素材は使っていません。
※このブログ下部にてGameSynthパッチをダウンロードできます。

ロボット兵のアサルト攻撃

冒頭、ロボット兵の突撃パートを見てみましょう。ロボットの動きとライフル音がメインになります。 まず、リポジトリ検索をすると"RobotFootsteps(ロボットの足音)"パッチが手に入ります。ただ、音を聞くとこれは大型ロボットタイプの音なので、人型ロボットのサイズに合わせて修正していきましょう。

ClangモジュールのImpactパラメーターを下げ、Mixerの4番目(Oscillator)のゲインを下げると、メカの迫力をうまく抑えられるでしょう。



脚の動きを作りましょう。これは2つのレイヤーを重ねていきます。1つ目は、Machineモジュールをメインジェネレーターとします。このモジュールは、サーボモーターの「ウイイン」音を作るのに非常に便利です。

Envelopeでスロットルのめりはり調整するだけで、非常に臨場感のあるマシンの動きを実現できます。Clockは一定間隔にサウンドをトリガーし、かつEnvelopeにわずかにVariation値を設けることで、 トリガーごとに微妙に違った「ウイイン」音が生まれます。

2つ目は、より軽く、よりハイテクな「キュイイン」サーボ音です。Blipモジュールの「ビューン」音を、Ring Modulatorで変調しており、MegaSawモジュールの「フィーン」音と掛け合わせることで、Blip音の耳障り感を消しています。続くRectifierは、信号にノイズを追加する機能で、これによりスムーズな「キュイイン」が生まれます。



続いて、SFライフルの発砲音を作りましょう。

ハイテクなデザインのため、銃弾の火薬に、SF系のレイヤーも追加していきましょう。したがって、パッチは4本のレイヤーで構成された、やや複雑なものになります。

①モジュール左:GunshotThunderモジュールを合わせて、重みのある発砲音を作ります。
②モジュール右から二番目:GunFoleyの「カチャッ」音で、実銃の実感を与えています。
③モジュール右:SFっぽい「ピュン」音を、Beamモジュールで作り、Envelopeでピッチを右肩下がりにしています。BeamモジュールのWidthSlope値を変えれば、違ったタイプの銃声も作り出せるでしょう。
④モジュール中央:Chaosモジュール+Chorusによって、「グショッ」とした有機的なタッチを与えています。Time Shifterモジュールで若干音を遅らせて、他の音とぶつからないようにしています。




物陰に隠れる兵士

次のシーケンス冒頭の爆発は、ChirpモジュールとBlipモジュールを組み合わせて「ドゴン」という衝撃音を作り、Fireモジュールで爆炎を追加し、爆発のテールはThunderモジュールで表現しています。(この手法は、前のシーケンス開始時の遠鳴りの爆発でも使われています)



兵士の足音は、 Footstepsモデルを使えば、簡単に作成できます。下の動画のように[動きに"Run"]→[靴に"Boots"を設定]、[地面に"Concrete"]と選択していき、スケッチパッドに線を描けば足音シーケンスがすぐに仕上がります。SpeedDetuneEQを調整すれば、走る速さや音の存在感も簡単に微調整できます。

他にもFootstepsモデルを使用した、足音作成のテクニックを紹介しましょう。砂の地面を利用して「サーッ」音を作ったり、JumpScuff(擦り具合)を利用して兵士のスライディングや立ち上がりの音を作成しました。

またImpact(衝突音・摩擦音)モデルを使い、左下にあるImpact noise(衝突ノイズ)エリアを使えば、砂利や雪を踏みしめるような「ジャリッ」とした音を、手早く作れます。



Modularモデルで、兵士のスライディング音を作ってみましょう。「ズザアーッ」とした砂上のようなスライドには、Granular NoiseRocksモジュールが便利です。また、Leaves(草木)設定にしたFootstepsモジュールを追加して、草の上を滑るような「サラサラ」音も加えています。

また、Whooshモデルも使って、「サーッ」と颯爽に登場する感じも加えましょう。Deflector(風切り板)エリアにて、高周波側に狭い三角を作り、スケッチパッドに線を描くことで、厚みのない軽やかな風音が生まれます。動画ではさらにEQで、高周波寄りの音へとカーブを整えています。動画では兵士が右から滑りこんできますが、スケッチパッドで左→右へと線を描けば、音の位相を映像と揃えることができます。



最後に、布すれ音も追加しましょう。Noise Bandsモジュールはこのタイプのサウンドの音源に非常に優れています。フィルターで音を整え、 Comb Filterで共鳴を与えることで、布音を作成しました。




紛争地帯の環境音

ビデオ全体で鳴り響く、紛争地帯の「ドーンパパパ…」環境音を追加しましょう。

まず、Modularモデルで低く静かな「エアトーン」を作りました。
シンプルなNoiseモジュールを、ローパス設定のBiquad Filterに接続し、わずかに異なる2つのReverbモジュールに送信して、微妙なステレオ効果を作っています。時間の経過とともにわずかに変化させるため、疑似ランダム信号を生成するPerlin Noiseを使って、フィルターのカットオフを変調しています。Mapperは、変調信号の変動の振幅を制限するために使っています。



また、遠い爆発と銃声を追加するため、GunshotモジュールとThunderモジュールを使ったパッチも作りました。このようにThunderモジュールは、爆発系サウンドの作成にも非常に適しています。EQフィルターとSpectral Delayモジュールでは、「遠くで鳴っている」ように加工しています。

そこで、非常に便利なテクニックを紹介しましょう。GameSynthでは、パラメーターにランダム幅を割り当てて、1つのパッチから多数のサウンドバリエーションを自動的に作り出すことができます。

以下の動画では「似ているけど少し違って聞こえる」wavファイルをいくつか書き出しました。これらのwavファイルをParticlesモデルにインポートし、スケッチパッドに線を描くと、爆発音が散在する遠なりの紛争環境音が即座にシミュレートできます。描画中にさまざまなサウンドがトリガーされ、マウスの動きに沿って変わっていくため、非常に直感的な方法でグラニュラー合成を行えます。



このテクニックを、以下の別のタイプの銃声にも使っていきます。
・リポ​​ジトリのShotgunパッチを使用
・パッチ右側のライン(Gun FoleyモジュールとBulletsモジュールが含まれている)を削除して、銃声だけを残します。
Clipperモジュールの直前に、ローパス設定されたEQフィルターを追加して、遠鳴りのサウンドにしています。

GameSynthのパッチリポジトリは、欲しい効果音パッチを見つけて好みに合わせて変更できる、非常に便利なリソースです。いくつかのパラメーターにランダム幅を割り当て、複数バリエーションを書き出し、Particlesモデルで銃声を散らばせていきます。



レイヤーをReaperで整え、環境音が完成しました。これで、GameSynthでのアクションシーンにおけるサウンド設計の第1部は終了です!

従来の効果音素材ベースのサウンドデザインでは、録音、クリーニング、編集やプロセシング、タグやカテゴリ付けといった煩雑な作業が伴います。それらと比較しても、GameSynthはワークフローの便利さ、生産性、そしてシーンに合った音に仕上げるという点で、多くのメリットがあることがおわかりでしょう。 もちろん、必要に応じて効果音素材と併用できるのも便利です。

第2部では、GameSynthでさらに多様なシーンに音をあてていきます!





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