BLOG
弊社英語ブログのうち、いくつかを日本語翻訳しています。英語ブログはこちら
熱帯雨林の環境音を作ってみよう
様々な鳥の声がひしめき合う、熱帯雨林の情景音をGameSynthで作ってみましょう。
今回紹介する例は、異なる詳細レベル(LOD = level of detail)を使ってサウンドデザインを行う良い見本で、CPU消費を抑えつつ複雑なサウンドが作成できるため、プロシージャルサウンドではよく用いられるアプローチです。
(こちらのブログでも、雨音のシミュレーションを例に解説しています)
完成パッチは、大きく3本のラインで構成されています。
左:「近距離」で1羽のカラスのような鳥が鳴く声
右:「中距離」で鳴くメロディアスな小鳥のさえずり
中央:背景で鳥が歌い、葉がざわめくといった「一般的」な環境音
さらにこれらをStereoモジュールでミックスする際、左に配置したラインは左方向から聞こえる、といったステレオ配置を再現しています。
中央:背景の環境音
いかにも熱帯雨林らしい雰囲気を作るため、まずは多くの鳥が背景でさえずる音を再現しました。
CPUサイクルを節約するため、個々の鳥の音を合成する代わりに、「一つの音源」のみを使っています。
音のベースにはGoo(液体)モジュールを使用しました。これは、「高周波で急速に変化するノイズ」を生成するためです。そして、Thunder(雷)モジュールでクロスシンセシスを行うことで、音色がより鳥にふさわしいものに変えられます。
少し意外かもしれませんが、Gooモジュールは、実際には鳥の群れの音をシミュレートするのに最適なチョイスになります。GameSynthリポジトリの中に「Shrub Birds」というパッチがありますが、そこでは別の方法も提示されており、異なる設定の2機のGooモジュールをFrequency Shifter(周波数シフター)モジュールに通しミックスすることで、また違った音色の鳥を表現しています。
また、中央のラインにはLeaves(葉)モジュールも加え、これだけで木々の葉がそよぐ音を作り出します。
左:鳥の鳴き声
ギャーという鳥の鳴き声は、GameSynthリポジトリの「Corvus Bird Rattle(=カラスのガラガラ声)」パッチを使っています。
音源はすべて1つのNoise(ノイズ)モジュールから生まれています。Noiseは並列に用意された2機のEQ Filter(レゾナンス周波数の異なる2つのバンドパスフィルター)に通されて送信されますが、それらのFrequency(中心周波数)は同じEnvelopeモジュールによって変調され、その結果、僅かに下降する2つのスペクトルバンプで構成されたノイズの多い信号が発生します。
その2つがミックスされることで、「ギャー↓」と若干下がるノイズ声になりますが、EnvelopeモジュールにはVariation値が設けられており、毎回少しずつ異なる「ギャー」の声が生成するように設定されています。
その後、このノイズの多い信号の振幅は、パルス設定のLFOによって変調され、より生き物の声のような印象を与えています。
上の動画で示されているように、すでにこの段階で、鳥の鳴き声の基本的な音色とピッチの変化は出来上がっています。
パッチの残りの部分は、基本的にTube(管)、Comb Filter(コムフィルター)、Delay(ディレイ)などで構成され、音をより自然にし、鳥の鳴管をシミュレートする処理のために使われています。
右:メロディアスな小鳥のさえずり
パッチ右のラインで作られる小鳥の「ヒヨヒヨ」声は、かなりベーシックな手法です。これはリポジトリにある「Bird 1」というパッチを使っています。
2機のOscillatorモジュールを、振幅と周波数の両方において(Pitch Shifterモジュールを通して)変調し、小鳥のさえずりを作ります。ミックスした後、EQとReverbに通し、音にもう少し存在感を与えます。
GameSynthのModularモデルで鳥を合成する方法は他にもたくさんあります。たとえば、Animalモジュールに備わっているBird(鳥)設定を使うのも便利でしょう。以下の動画は、「37-BirdSong」プリセットの例です。
今回紹介したすべてのパッチは、GameSynthリポジトリからダウンロードできます。リポジトリウィンドウの検索画面で「bird」と入力し、いろいろな作例をチェックしてみましょう。
あなたならGameSynthを使って、どのように鳥の鳴き声を作りますか?